<平成19年度>カリキュラム等の改正理由について

2008年4月1日

島根大学法科大学院(法務研究科)では、当初の設置理念・基本方針を踏まえながらもプロセスとしての法曹養成の中核となるべき法科大学院の理念に相応しい教育課程・カリキュラム等の一層の充実のために更なる検討を加えてきました。その過程では、設置審の履行状況調査に基づく留意事項、日弁連法務研究財団によるトライアル評価(第三者評価)、自己点検・評価および外部評価等における諸々の指摘についても慎重な検討を行ってきました。その結果として、上記の諸々の指摘や設置後4年目を迎えた教育実践をも踏まえて、従来のカリキュラムの基本を維持しながらも部分的な改正を行う必要があるとの結論に至りました。

具体的な改正点についてはカリキュラム表等を参照してください。ここでは、改正の基本的な考え方について説明します。


改正の基本的ポイント

1.4学期制の再編

1-1)法律基本科目4単位科目の2単位科目への分割・再編

 

〔具体例〕

 

現在(4単位)

改正後(各2単位)

[1年次]

民法1 →民法1・2

民法2

→民法3・4

民事訴訟法 →民事訴訟法1・2、など
[2年次] 商法 →商法1・2

公法3 →公法3・4、など

 

 

1-2)法律基本科目各分野(公法・民事・刑事)の通年での系統的・継続的履修の確保

〔具体例

 

現在

改正後

[1年次]

公法1(春:2単位) →公法1(前期:2単位)

公法2(夏:2単位) →公法2(後期:2単位)

刑法1(秋:4単位) →刑法1(春:2単位)・2(夏:2単位)

刑事訴訟法(冬:4単位) →刑事訴訟法1(秋:2単位)・2(冬:2単位)

 

 

(理由)

島根大学法科大学院では、法律基本科目・実務基礎科目を中心に4学期(クォーター)制を採用しています。これは少数の科目を短期間で集中的に学習させると共に、各科目の学年・学期配置を基本的な科目から発展的・応用的な科目へと順次履修できるように配慮して、短期集中型の授業を順次積み上げていくことにより、効率的な学習効果をあげることを狙いとするものです(短期集中型積上げ方式)。セメスター制よりも学生の到達度・学習状況等をきめ細かく把握できるというメリットもあります。

このシステムでは、現在、例えば4単位の科目を実質2ヶ月間で学習するため、毎週4コマ(1コマ=90分)の授業が行われています。ただし、科目数が限られているとは言え、毎週4コマの授業については予習・復習、授業準備等の点で学生・教員の双方にとってかなりの負担であることが指摘されていました。その代わり、各学期の科目数が限定されるため、集中的な学習効果という点では、一定の成果があがっていると思われます。他方で短期集中の結果として、特に公法系・刑事系の科目が前期(春・夏学期)または後期(秋・冬学期)に固まるため、逆に空白期間の存在のために積上げの効果が十分に発揮されていないのではないかという問題もありました。

そこで、4学期制の基本的な利点を維持しつつ、上記の諸問題を解消するために、原則として4単位科目を2単位2科目に分割し、各学年で通年を通して各分野を系統的・継続的に学習できるように学期配置等を再編し直すことにしました(この点で2とも関連します。改正カリキュラム表参照)。

 

 

 

2.科目群分類および配当年次・学期等の見直し

2-1)法律基本科目の学期配置の再編および1部選択必修科目の必修科目化

〔具体例〕

2年次の民法4(家族法=4単位)を冬学期から民法7・8(各2単位)とし春・夏学期に変更し、民事法総合1(2単位)を夏学期から秋学期に、民事法総合2を秋学期から冬学期に変更。

現在選択必修科目である公法総合2および刑事法総合1・2をそれぞれ必修科目とする。

2-2)基礎法学・隣接科目と展開・先端科目の1部科目の分類・配当年次等の見直し

〔具体例〕

展開・先端科目群から基礎法学・隣接科目群へ変更=地域と法、英米法、EU法

基礎法学・隣接科目群から展開・先端科目群へ変更=国際人権法、国際法、刑事学

展開・先端科目群の「家族と法」および「国際人権法」の配当年次を1年次以上から2年次以上に変更。

2-3)実務基礎科目の学年・学期配置等の見直し・再編

〔具体例〕

2年次の法曹倫理(2単位)を秋学期から春学期に変更。

エクスターンシップ及びリーガルクリニック(実務臨床系科目)を2年次秋学期(夏休み含む)~3年次夏学期(夏休み含む)に履修。

3年次後期に必修科目として実務総合演習(仮称:2単位)を新たに配置。

2-4)各科目群毎の必要修得単位数の見直し

〔具体例〕

改正後の修了要件については、カリキュラム表末尾の記載を参照してください。

(理由)

今回のカリキュラム改正は4学期制の見直し・再編を中心としていますが、それは同時に積上げ方式の一層の徹底をも目指すものです。

まず、基礎から応用への積上げという観点から、2年次前期までに法律基本科目中の基礎的科目(講義形式を基本とする科目)の履修を終えさせ、2年次後期以降から応用的科目である総合科目(双方向・多方向型科目)を履修させる形に貫徹させることにしました。さらに各分野についてバランスよく応用的科目を履修させるべきであるとの観点から、公法・刑事法系の総合科目を全て必修科目とします(2-1)。

次に、展開・先端および基礎法学・隣接科目群の一部の科目については、科目の内容からして、また第三者評価基準等との整合性にも配慮し、その位置づけや配当年次等に再検討すべきものがありましたので、見直しました(2-2)。

また、実務基礎科目の編成については、特に臨床系科目(エクスターンシップ等)は対外的な(特に受入法律事務所等との)関係に配慮した結果、法曹倫理等を先に履修させるべきであると判断し、さらに、実務科目の仕上げとしての総合的科目を3年次後期に配置し法曹養成教育の仕上げとするのが妥当であると考え、それらを踏まえた見直し行いました(2-3)。

以上の変更に伴い、また第三者評価基準等との整合性にも配慮し、修了要件単位数等を変更しました(2-4)。

 

 

3.成績評価・修了認定の方法・基準等の見直し(GPA制度導入)

今回の改正でもう一つ重要な点は、GPA制度を導入したことです。GPA制度は大学等における成績評価の世界標準とも言えるシステムですが、各履修科目の評価(A+、A、B、Cなど)を点数化し、その平均点が一定以上のレベルに達していないと進級等を認めないものです。今回、島根大学法科大学院では、従来の単位制度に加えてこのGPAを修了認定に必要な要件とする制度を導入しました。

具体的な評価ランク付けと修了要件等は次のとおりです。

 

 

(1)評価ランクの分類

 

評価(素点)

A+(90~100)

A(80~89)

B+(75~79)

B (70~74)

C (65~69)

D (60~64)

F (0~59)

=ポイント

=4.0 =3.0 =2.5 =2.0 =1.5 =1.0 =0

*F評価の科目の単位数は、GPAを計算する場合の母数には含めません。

 

 

(2)修了要件基準点は1.5です(要するに、94単位履修しても、GPA=平均点が1.5点に満たなければ、修了できまません)。

(3)再履修:D及びFの評価を受けた科目については一定の範囲内で再履修を認めます。

(4)GPAは、進級要件とはしませんが、履修指導の参考にします(殆どの科目がDであるという場合、仮に3年次まで進級しても、その年度で

修了することは極めて困難になることが予想されます)。

 

(理由)

今回GPAを修了要件の一部として導入しようと考えた理由は、プロセスとしての法曹養成の中核となる法科大学院(専門職大学院)の特殊性を考えると、単にギリギリの点数で一定単位を修得するだけで修了できるとするのは妥当ではなく、一定の単位取得と共に一定水準以上の成績評価を受けることを修了の要件とすることが望ましいと考えたためです。法科大学院と新司法試験との関係には難しい問題もありますが、我々は法科大学院では単に単位を取って修了できればそれで良い(後は試験勉強のみに集中する)という考え方を安易に容認するべきではないと考えます。GPAを導入することにより、各学生の学習到達度をより適切に把握し、それを踏まえて指導することによって、学習への不断の努力を促し、学習のインセンティブを高め、質の高い法的見識を持った法曹を養成したいと考えています。